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  • Shiori ICHIKAWA

個展「石の下の倫理」についての思い

更新日:1月2日

ご無沙汰しております。市川です。

暖かな冬の始まりから、一気に寒さがやってきました。

体が驚いている方も多いかと思いますが、みなさんお元気でお過ごしであることを願っております。


この一年で世界に変化があって、少しずつ不安がつのっています。威圧的な言葉や一方的な決めつけ、解釈が蔓延しているところを見ると、今まで様々な知識を持つ人々がどうにか支えてきた平和が、決壊寸前なのではないかと思ってしまいます。

分断や貧困が進む先にあるのは、戦争であるということ。そういった状況で、見て見ぬふりをする危険性について、考えない日はありません。2016年に訪れたアウシュビッツのビルケナウ強制収容所で、唯一の日本人ガイドである中谷剛さんが私たちに向けて言った言葉が思い出されます。


「戦争は独裁者だけが進めるものではなく、それに突き動かされた人々が進めることでもある。アウシュビッツにヒトラーの写真がないのは、こういった虐殺や収容をおこなったのはヒトラーだけではなく、それに突き動かされた民衆でもあるからです。ここに話を聞きにきたあなたたちはとても強く、元気がまだある。ここで見たことを人に伝え、この悲劇が起こらないように力を尽くすことができる人たちであると信じています。」


中谷さんは、アウシュビッツの入り口に集まった数人の日本人を集めて、一人一人の目を見てそう伝えました。まさか、戦争がまた起こるなんてありえない。当時はそう思っていましたが、中谷さんの真剣な眼差しは何年経っても私の中に残り、今でも私の意識の根底で力強く背中を押します。


戦争なんて、ないない。そんなに本気になっちゃって、どうしたの。と、思われてしまうかもしれないですが、私は歴史や哲学を学べば学ぶほど、平和が崩れ落ちる簡単さを痛感しています。教育や芸術に国がお金を使わなくなってきていること、つまり、考える力を養う機会が失われつつあるということ。この先の世代の生活を考えた、長い目をもっての格差是正や人の幸福を願った社会作りができていないということ。絶対に目を背けてはいけません。

まず、このような気持ちで絵を描いているのだと、ここでは伝えさせてください。


私は作品を解説する際に、「多様な考えがあること」「それぞれの考え方に背景があること」という言葉をよく用います。それぞれの背景があり、認めようという意味合いもありますが、何より、それぞれの考え方が生まれるまでの経緯や人間の心の成り立ちについて、考えてみてほしいという願いがあります。

いろいろな人がいるよね、というのは、結構当たり前のことです。そこから、文化が違うこととはどういうことだ?とか、言葉が違うならば世界の見方がかわるのか?とか、きっと疑問が湧いて出てくるはず。それを知ろうとしてくれるように、人の背中を押すことができたら、きっと私の作品はうまく働いているのだと思います。中谷さんの眼差しが私の心に残るように、何かを作品で残したいと願います。



作品画像「ジム(ゾウムシ)」
「ジム(ゾウムシ)」2022 キャンバスにアクリル


本展覧会名は、「石の下の倫理」と題しました。

最近、宮竹 貴久さん著の「「死んだふり」で生きのびる: 生き物たちの奇妙な戦略」という本を拝読しました。そこから鮮明に思い出された、自身が幼い頃にひっくり返した石の下の虫たちのエピソードと、最近カバンの中に入っていたカメムシのエピソードなどをベースに作品をいくつか制作しました。

平穏な生活を送っていた弱い生き物に突如不安の影を落とす強い生き物の介入と、死んだふりや匂いを発するなどの斜め上の進化を遂げてどうにかそれに立ち向かってきた小さな虫たち。「七人の侍」に描かれた農民の逞しさなども想起させる強かさに、弱きものの力強さを感じます。


私の言葉は弱く、暴力には到底敵いません。しかし、「北風と太陽」の太陽のように何か少しでも作用できたらと願うばかりです。

虫たちにもその強さを期待し、励まされるような気持ちで描きました。


展覧会の会場は、ギャラリーそうめい堂です。

そうめい堂には、大学院時代から勤務させていただいています。

スタッフとしてお店にいますが、お邪魔しないように他の仕事をしていますので、よかったら話しかけてください。


それでは、皆様にお会いできることを心より願っております。


市川



展覧会概要

「石の下の倫理」


日時: 2023年1月21日(土)〜2月4日(土)

   11:00-18:30

   ※日・月・祝日はお休み

会場: ギャラリーそうめい堂(〒101-0051 東京都千代田区神田神保町 1-8 山田ビル7F)

WEB: https://www.s-contemporary.art

(時期が近づくと情報が公開されます。また、すべての展示作品を公開予定です。)


何かご不明な点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡ください。











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